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Hello 山岸飛鳥 さん     
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プロフィール
HN:
山岸飛鳥
HP:
性別:
男性
職業:
木の家プロデュース
趣味:
きこり
自己紹介:
木の家プロデュース明月社主宰
木の力で子どもたちを守りたい
田作の歯ぎしりかもしれないけど
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  火事編その1では、家の中の火事について書いたので、今度はトナリの火事が燃え移らないようにすること。または、こっちの火事がトナリに燃え移らないようにすること、について。
 
 消防白書(平成20年)によれば、火災で亡くなる方は1日に5.5人、年に2005人もいる。そのうち575人は自分で火をつけて自殺してしまった人だという。20代から50代に限ってみれば約半分くらいを放火自殺が占めている。割合で多いのはやはり高齢者で、65才以上の方が814人で6割近い。15才以下の子どもも78人が犠牲になっていて、火事の怖さが実感できる。
 けれどもこれは、子どもの命を奪う最大の原因ではないことにも注意。こんどは厚生労働省の資料を見てみると、(こっちは15歳以下ではなく14歳以下だったりカウントの仕方がちがうので数字が一致しないけれども)死亡原因で一番多いのは出産時の問題や先天性の病気。次が転落や溺死などの火事以外の家庭内での事故が197人。ほぼ同じくらいで交通事故が191人。ちょっと離れて火事が56人。なんと自殺が47人(19歳以下になると500人以上)。
 家と車というファミリーの象徴が子どもの命を奪う原因になっているというのは、皮肉というか悲しい話なのだが、こういう資料を見ておくと何に気をつけたらいいのかよくわかるので、見ているだけで気分が落ち込んでくるけれども、やはり目は通しておきたい。詳しいデータは、厚生労働省のホームページに「人口動態統計 年報」というカタックルシイ統計があり、その中の「家庭内における主な不慮の事故の種類別にみた年齢別死亡数・構成割合」という長ったらしい名前で掲載されている。
 
 では、元に戻って、トナリの火事。
 要するに、外壁と屋根と窓をどうするか、という話しになる。それさえしっかりしていれば、トナリが燃えてもこっちは平気だ。逆に、こっちが焼けても中だけで済む。よくある住宅地の家ならば、30分持ちこたえるというのが基準になっている。おっと、また30分が出てきた。前の章でも「30分」というのが何度も出てきたのを憶えていたら優等生だ。さてさて、なんで30分なんだろう。
 これは、割と単純で30分以内には消防車が来ることになっているからだ。さっきも見た消防白書によると、放水が必要なくらいの大きな火事の場合、97%が通報から20分以内に放水が始まって、43%が30分以内には火を消してくれる。というわけで、1年間に1万5千回以上も放水車から盛大に水を放っているのだから、消防士さんも大変だ。
 などと感謝しつつ、でも火事にならないのが一番だから、どうやったらトナリの火事をもらい火しないかということと、ウチの火事をトナリへうつさないかということを考えてみよう。まずは、トナリ→ウチの場合。
 もらい火で一番危険なのは屋根。火の粉が飛んできて、少し離れていても燃え移る可能性がある。 日本昔話のような茅葺き屋根だったら、屋根の上からたき火が始まってしまう。しょちゅう大火事がおきていた江戸の街では、ほとんどの家の屋根は板だった。木の板。今どきの常識だと板の屋根なんて犬小屋かと思うけれども、ちょと昔は普通のことだったらしい。飛鳥板葺宮という7世紀の皇居がある。かの有名な蘇我入鹿が暗殺された場所だ。このへんが日本での板葺の屋根の流行の発端のようだ。平安時代以降は、より高級なこけら葺というものに進化して国宝級の建物もこれで造られた。修学旅行でおなじみ、京都の金閣や銀閣もこのこけら葺。こけらという字は柿にそっくりなのだが、点の打ち方が微妙に違うというへんてこな字、なんて言う話はここでは関係ないからおいといて、要するに板葺というのは高級低級に関わらず、犬小屋じゃなくて多くの建物に使われていたということ。もちろん、高級建物な板葺はこけら葺のような高級な板葺で、庶民の家はタダの板を並べただけの板葺だったはずだ。
 ところが、江戸のように世界有数の大都市になってしまうと、とにかく良く燃える。前の章でも少しでてきたが、3年に1回は大火事がおきていたというからスゴイ。さっさと瓦屋根にしてしまえば少しはマシだったのだろうに、殿は庶民が贅沢をするのが大嫌いだったから、長いこと瓦屋根を禁止していた。その「功績」もあって、1657年の明暦の大火では10万人以上の人が犠牲になったともいわれる。それから60年を過ぎたころの享保の改革で、やっとこさ「屋根は瓦にしろ」ということになったらしい。言ったのは、かの有名な大岡越前守だとか。
 それでも、瓦は高価だし一気に普及することもなく、50年ほど後の1772年には目黒行人坂の大火がおきてしまう。ただしこの頃になると江戸市民は火事慣れしていたこともあって、死者は1万5千人くらいだったらしい。120年間で、犠牲者を一桁減らすことに成功している。この火事は放火事件で、犯人を捕まえたのは鬼平犯科帳の火付盗賊改役・長谷川平蔵の先代だった。
 さらに30年ほどして、1806年に丙寅の大火というのがおきるが、このときの死者は1200人ほどで、これまた一桁減らしている。燃えるのは同じように燃えているのだが、逃げ方が上手くなったのと、燃え広がるスピードが変わったのだと思われる。都市計画の問題とか、いろんな原因が考えられるけれども、瓦屋根が徐々に増えたというのも要因の一つだったのではないだろうか。
 今では、瓦の他にも燃えにくい屋根材料はいろいろあって、不燃材料とか飛び火試験とかの認定をとっているものを使うことで、降りかかる火の粉を払うようにしている。
 
 しかし、屋根だけ対策しても燃えることは燃える。よく燃える。だって、江戸時代の建物は壁のほとんどが窓で、その窓は紙でできている。これが燃えない方がおかしい。燃え広がりにくくする、燃え広がる速度を遅くする、逃げやすくするという政策はあっても、燃えないようにするという発想は江戸時代には見あたらない。当時の建築でも蔵という防火の建築はあったのだけれども、そんなものに住むというのは論外だったわけだ。
 それが、決定的な発想の転換になるのが関東大震災。なにもかも焼け尽くされた後に、数少ない耐火建築の残骸が残っていたものだから、やはり耐火はスゴイ、コンクリートは燃えないぞ、ということになった。ということで、1920年代の東京復興は耐火建築が主役になる。つまり、屋根だけじゃなくて壁も燃えないし、窓は小さくて紙じゃなくてガラスが入っている。このことは、結果として高層建築を生みだしかえって多くの犠牲者を出す結果にもなったのは前に書いたとおり。けれども、同じ規模の建築で比べれば、江戸時代からの紙でできている家よりも火事に強いのはアタリマエ。
 こうした耐火建築のまねをしたものが木造モルタルというやつで、これまでは柱の間に土壁を塗っておしまいだったのに、その外側にモルタルを塗るようになった。たしかに、何もしないよりは燃えにくい。とくに、中身が土壁だったらなかなかのものだが、最近では土壁を使わないので、モルタルを2センチ以上塗りなさいということになっている。このモルタル壁は見た目がきれいなのと何十年かはメンテナンスフリーなので私はよく使のだけれど、最近はあまり見かけなくなった。代わりに世の中を席巻しているのはサイディングという既製品のボードで、これも防火認定品は30分は燃え移らないということになっている。
 
 こうして関東大震災以降、壁も燃えにくい建物が増えてきた。窓も、江戸時代のような紙ではなくてガラスになった。しかし、いくら紙からガラスになっても、窓が弱点になることは変わりない。そこで、特にリスクの高いところでは防火戸というものにしなさい、ということになった。ガラスに金網が入っているものを見たことがあるだろうか。あれは、泥棒対策じゃなくて防火のために入っているというのは案外知られていない。火事の熱でガラスがパリンといっても、炎がメラメラと入り込むような大穴が開かないようになっているのだ。(泥棒さんにはガラスが飛び散らないのでかえって好都合らしい。)
 郊外の住宅地ではここまで求められることはあまりないが、大阪市内とか都市部では住宅地でも窓は防火戸にしなくてはならない地域もある。正確に言うと、準防火地域というところでは非常に規制がきつくなるので、注意が必要。特に、3階建てになるとモウレツにきつい。
 準防火地域でないほとんどの場所は、法22条地域といって、一般の住宅の場合は屋根と外壁だけが規制される。さらに、田舎に行くと22条地域ですらなくなって何も規制のない場合もある。ここまで行くと建築確認申請すらいらないこともあったりするのだけれど、これはレアケース。
 逆に、駅前のような場所だと防火地域というのもあって、ここは3階建て以上か100㎡(約30坪)以上の建物は耐火建築物にしなくちゃならない。なので、木造住宅はほぼ無理。いや、実は木造でも耐火建築を作る方法が最近になって開発されているのでできないことはないんだけれども、少なくとも木の構造が目に見えるような木の家は無理。というわけで、ここでは、法22条地域と準防火地域について書いている。
 ウチって何地域なの? と疑問に思ったら、市役所に電話して聞けば教えてくれる。気の利いた市町村ならばインターネットで公開しているところもある。もし今住んでいるが防火地域だったら、もし今の家が木造だったとしても、次に建て直すときは2階建て以下で30坪以下で、なおかつ規制の厳しい木造にするか、耐火建築にするかしかない。どうしても木の家にしたいときは、奥の手で売っちゃうという選択肢もある。防火地域はだいたい繁華街で土地の値段が高いから、売り払って少し郊外に引っ越せば、土地と建物の代金を払ってもおつりが来るかもしれない。
 
 話があっちこっち行ってしまったので、準防火地域の話にもどそう。家を建てようと思った場所が準防火地域だったら、さっき言ったように窓は網入りになる。(ちょっと高価な網無し防火もある) 窓以外の場所はどうなるかというと、これは2階建てと3階建てで大違い。2階建ての場合は色々あるけれども、法22条とそれほど大きくは変わらない。そうそう、軒裏(外から見える屋根の裏側)に木は使えない、というのは違うところか。
 準防火地域の場合は、都心部に近くて3階建てになる可能性が高いから、3階建てのことを書いておこう。これは結構きついしややこしいので。
 準防火地域で木造の3階建てを建てるには、法律の上では三つのルートがある。私たちの用語では、イ準耐と省令準耐とロー1準耐という。コリャなんだろう。やっぱり、ややこしそうだ。
 イ準耐というのは、家の外側は法22条とそれほど変わらないのだけれど、家の中の木の部分を徹底的にカバーをしなさい、というもの。床板と腰壁以外は木を見せることはできない。これだと、木造でも何造でもあまり違いがわからなくって、木の家にはなりにくい。大阪市内なんかで見かける3階建ての木造はほとんどこれ。
 省令準耐というのは、家の中は規制を受けない代わりに、外壁や窓を厳しくしたもの。特に、窓がきつい。あまりにもややこしいので簡単にしておくけれども、お隣との敷地境界から1m以内は小さい小さい窓しか開かない窓しか作れない。1m以上離せばちょっと大きめの窓を作れるけれども、、窓の大きさの合計が壁の大きさの何%までという総量規制があって、とにかく窓が作りにくい。もともと広い敷地じゃないから3階建てにするのだから、お隣から1mも離して窓を作るってこと自体に無理がある。そんなわけで、内部は木の家を満喫できるけれども、窓の小さいうっとうしい家になりやすい。
 最後に、ロー1準耐だ。専門の人がこれを読んでいるとしたら、エッと思うかもしれない。実は、ロー1準耐といのは、法律上は存在するけれども実際に建てられることはまずない という代物だからだ。どういうモノかというと、外壁は耐火、屋根は準耐火、窓は防火にすることで、内装も窓の大きさも規制しないというもの。これなら、好きな方にプランできるのだが、なにせ木造で耐火の外壁というのが無理だった、これまでは。ところが、数年前に木造の骨組みの外側に特殊なモルタルを塗ってコンクリート並みの耐火構造にするというスグレモノが開発された。
 おお、これでロー1が木造でできるじゃないかと喜んだ私は、さっそくそれで家を設計した。ところが、確認申請を審査機関に持って行っても「???」てな感じで、門前払い。話も聞いてくれない。それではと、建築基準法を決めている国に聞いてみようと、外郭団体である日本住宅木材技術センターに電話してみたが、「ロー1は実際に建てられたことなんてないんじゃないですか。」というお返事。同センターのホームページにはロー1の図解もあるのに、「何となく書いてみたけれども実際にどうやって作るのかは分からない」という頼りになる回答だったのである。
 そもそもこの耐火壁を開発した会社も、開発したものの使い方は考えていないし、八方ふさがりになってしまった。ところが捨てる神あれば拾う神ありで、2軒目に訪ねた審査機関が相談に乗ってくれた。そこで、ここはこうしようとか、その部分はこう処理しますとか、何ヶ月もかけて考えては相談に通って、ようやくOKをとった。だから、私の建てているロー1準体の木造3階建ては日本初ではないだろうかと、密かに思っている。
 とにもかくにも、この道が開けたので、準防火地域でも木の家は可能になった。
 
 と、こんなうようなことを考えながら、火事が燃え広がらないような家を作らなくてはならい。結構面倒だし、予算もかかるし、制限もされる。でも、最初のほうに書いたように火事で死ぬ人は少なくない。だから、これは構造強度同じでちゃんと考えて作りたい。
 それと、外壁や屋根の耐火性には断熱材も影響するんだけれども、断熱は大きなテーマなのでそっちの章でまとめて話をしようと思う。
 


 
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ロー1準耐 ちょっと挑戦してみようかと思います。
aone URL 2009/05/24(Sun)21:41:44 編集
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