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Hello 山岸飛鳥 さん     
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プロフィール
HN:
山岸飛鳥
HP:
性別:
男性
職業:
木の家プロデュース
趣味:
きこり
自己紹介:
木の家プロデュース明月社主宰
木の力で子どもたちを守りたい
田作の歯ぎしりかもしれないけど
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  ここ数年、家を建てたいという人たちが盛んに「ダンネツハナンダンネ」と言い始めた。直訳すると「断熱材は何ですか?」という意味らしい。とくにダンナのほうがこだわっていて、「ウチデスカ ソトデスカ」と豆まきみたいなことも言う。ちなみに、私のよく行く天河弁財天では2月2日に鬼を神として迎えて、節分には「鬼は内 福は内」と言うそうだ。こういう包容力がこの神社の魅力なのだが、建築界はそうはいかないらしい。ウチとソト、あるいはウチ同士やソト同士の争いが日夜続けられている。
 あんまり泥仕合が続いているので、最初に結論を言ってしまうと、木造住宅の場合は内断熱も外断熱もない。無い。存在しない。この世に無い。木造住宅の断熱で内断熱とか外断熱とか言っているヤツは、言葉の意味すら理解できていないのであまり相手にしない方がいい。
 木造住宅の断熱は、外張り断熱か充填断熱というもの。柱の外側に貼り付けるのが外張り断熱で、柱と柱の間に詰め込むのが充填断熱。それを知ってか知らずか、ウチだソトだと騒いでいるのは、野球の試合を見ながらレアルマドリードとバルセロナの応援合戦をしているようなもんだ。
 
 じゃあ外張り断熱と外断熱は何が違うの?という話しになるんだけれど、その前に大事な問題がある。断熱は必要か?という根本問題だ。いったい、木造住宅に断熱材は必要なのか。
 断熱材のことを少々聞きかじってきた方は、なんだこいつオカシイんじゃないかと思うかもしれない。断熱がなかったら冬は寒いし夏熱い。だから光熱費が高くなってエコじゃない。と、洗脳 じゃなくて刷り込み じゃなくて教えられてきたのだから。
 なるほど、「昔の家は寒いし熱いしひどいもんだった」というのはウソじゃない。朝起きたら顔に雪が積もっていたなんていう話もあるくらいで、とくに寒さに対しては過酷な環境だった。かの有名な「家のつくりやうは夏をむねとすべし」という吉田兼好の教えを知ってか知らずか、日本の家はだいたい夏向きにできていたから、真冬は即死しない程度の防寒能力しかなかった。
 ただ、その寒さは断熱がなかったせいなんだろうか? それが問題だ。火事のところでも書いたように、昔ながらの日本の家は、壁がほとんど窓だ。その窓は紙一枚か、せいぜい雨戸があるくらい。しかも、すきま風は入り放題で、窓以外にも色んなところに穴が開いていて空が見えたりした。つまり、断熱材がどうのこうのという以前のレベルだったということだ。今の家ならば、窓を半分くらい開けっ放しにしたようなもんだ。これでは、断熱性能もへったくれもない。
 では、昔の家の窓を上等にしてスキマをふさいだらどうなるのかというと、壁はタダの土壁で窓だけはちゃんとふさいだ状態だと、外は0℃以下でも中は10℃くらいを保っていたりするデータがある。土壁の厚い蔵だと、もっと性能はいい。土壁なんて断熱性能は全然ダメだから、こりゃダンネツ教の教えに反する。こまった。
 実際に部屋の外と中の温度変化を計ると、断熱性能とはだいぶん違う結果が出ることが多い。何でかというと、断熱以外に「蓄熱」と「気化熱」があるからだ。蓄熱というのは読んで字のごとく熱を蓄えておくこと。断熱材が自分で熱を貯め込んで反対側へ熱が伝わるのを遅くする。断熱がバリアーならば蓄熱は凹むことで衝撃を吸収するバンパーのようなものだ。断熱と蓄熱のバランスで、中と外の温度差は決まってくる。
 蓄熱はすごく大きいけれども断熱はさっぱりなのがコンクリート。どんどん熱を吸い込んでいくので、夏は石焼き芋の石になり、冬はクーラーバッグの中の保冷剤になる。断熱はいいけれども全く蓄熱しないのがグラスウールなどの軽い綿状のもの。温度が急激に大きく変わると、効き目が悪い。夏の日光にはあまり効果がないし、冬に暖房器具を消すとあっという間に室温が下がっていく。
 ソフトボードとかセルロースファイバーなど、バランスのいい断熱材もあるなかで、土壁は断熱はコンクリートよりはマシで、蓄熱はコンクリートよりもちょっと小さいという位置にあって、そこそこの性能を発揮している。同じようにあんまり断熱はよくないけれども土壁よりちょっとマシで、蓄熱は土壁よりちょっと落ちるのが木。ログハウスのような木材そのものの壁も、だから数字以上に性能がいい。
 土壁やログハウスが数字以上の性能を発揮するもうひとつの理由は「気化熱」だ。中学校の理科を思い出せる人は・・・いるわけないか。では復習です。6畳の部屋に、水10gはいったお猪口をおいておきました。その水が蒸発するときに、まわりの空気から5.5kcalのエネルギーをブンどりました。(これが気化熱) 5.5kcalとられた空気は、当然温度が下がります。6畳の部屋にはだいたい24kgの空気があるので、1kgあたりでとられたエネルギーを割り算すると0.23kcalになります。空気1kgを1℃下げるのには0.24kcal必要なので、なんと、10gの水が蒸発するだけで、6畳の部屋の温度は約1℃下がることになります。
 わかったかな~。水が蒸気になるときにまわりの空気から熱を持ち逃げしてくれるので、空気の温度が下がる という仕組み。そう、夏の打ち水で気温が下がるというアレ。最近だと、夏になると市役所の玄関なんかで霧吹きしているドライミストなんかをよく見かける。ドライミストの中に入ってみると、この気化熱の効果をバッチリ体感できる。
 で、この気化熱と断熱材の何が関係しているのかというと、もともと水分をたくさん含んでいる断熱材は、熱くなると水分を蒸発させて気化熱を持ち逃げし、寒くなると蒸気を水に戻して持ち逃げしていた熱を空気に戻してやる。熱を蒸気という銀行に預けておくようなもので、これまた断熱性能上の性能を発揮することになる。土壁や木は、水分をたっぷり蓄えておけるので気化熱効果はとってもgoodというワケ。
 
 何の話だったかというと、断熱は必要か?ということだった。結論は断熱と蓄熱のバランスがよくて水分をためておける材料が良い ということなんだけれども、なんでこんな疑問を出したのか、もうちょっとシツコク考えてみたい。私が何に引っかかっているのか。
 どうしても気に入らないのが、何かというと登場する「エコ」ってやつだ。質問1。「エコ」は何の略でしょうか? 質問2。「エコ」は何の役に立つのでしょうか?  答え 「エコノミー」の略で、家計の役に立ちます。 っていうのが本音だろう。
 いったい誰が本気で生態学(エコロジー)を研究して地球環境のために断熱を考えているんだろうか。冷暖房費が安くなる というのが「エコ」でしょ。普通は。もし本気で地球環境を考えるんだったら、古い家を手直しして住んだ方がいい。(私にとったら自分のクビを絞めるような話だけど)家の新築なんてしないに越したことはない。建てること自体がモッタイナイし、しかも、「エコな家になったから もっと快適に」と言って結局以前より冷暖房を増やしていたりする。エコポイントなんていうのも同じで、エコポイントが付くから大型テレビに買い換えよう てな具合に電気の消費量はどんどん増えていく。
 1972年から30年間で家庭での電力消費量は4倍に膨れあがっている。中でも顕著に増えているのがエアコン。72年にはほぼゼロだったのが、今では全体の4分の1を占めている。それと、電子レンジやらウォシュレットの類やらの新手の家電が増えてきたのも大きい。エコだエコだといって、どんどん買わせ、どんどん電気を使わせるという家電メーカーと電力会社の企業戦略にまんまと乗せられているのが、今の「エコ」ってやつなんじゃないの? 私にはそうとしか思えない。本気でエコを考えるのなら、新型エアコンの代わりにしゃれた扇子でも買うべきでしょ。
 その「エコ」が家づくりにまで進出してきたから、「とっても胡散臭いなあ」と思って見ている。そうしたら案の定、外断熱なんてことを言い始めた。やっぱり。こいつら怪しい。断熱のイロハも分かっていないくせに、エコだ断熱だと大騒ぎしているなんて。
 
 ということで、外と内の話にたどり着いた。なんで外断熱じゃなくて外張り断熱なのか。内断熱じゃなくて充填断熱なのか。
 外断熱を一般の人に知らしめたのは、「日本のマンションにひそむ史上最大のミステーク」という一冊の本だった。コンクリートのマンションには外断熱のほうがいいのに、日本のマンションは内断熱ばっかりだ。という話。この本はたしかに合理性があった。コンクリートの壁の外側に断熱材を貼り付けるのか、内側に貼るのか、これが問題だった。コンクリートというのは、さっきも書いたように断熱が悪すぎて蓄熱が良すぎる。だから、外の暑さ寒さの影響をすぐに受けて、しかも一度冷えたら暖まりにくいし、熱くなってしまうとなかなか冷めない。冬の底冷えや、夏の夜までムンムンする熱気は、おぼえのある人も多いはず。だから、コンクリートの場合は、外側に断熱材を貼って外気の影響を受けにくいようにすることは、たしかに合理的なのである。
 ところが、だ。木造の建物の場合、コンクリートの壁に当たる部分には何があるだろうか。木があるって? う~ん惜しい。木もあるけれども、ほとんどは何もない。というか空気だ。柱と柱の間の空間、がらんどう、つまり空気。空気はコンクリートの正反対で、極端に断熱が良く蓄熱はほぼゼロ。こういうものの外側に断熱を貼ったからと言って「外断熱」とはいわないよ と学会で決められている。あくまでも、コンクリートのような蓄熱する部分の外に貼るから外断熱、中に貼るから内断熱という。これは私が言っているんじゃなくて、日本建築学会が言っている。
 まして、柱と柱の間の空間に断熱材を詰め込んだものを「内断熱」と呼ぶに至っては何をか言わんや。ま、あえて言うならば中断熱って呼びたいところだけれども、実際は充填断熱という。なのに、インターネットで内断熱と検索すると、出るわ出るわ4万件以上もヒットする。そのほとんどが言葉の意味を知らないでたらめサイトということだ。悪意はないのだろうけれど。
 
 要するに、こうした意味も分からずに大騒ぎをさせることで、たくさんある家の機能の中で断熱をクローズアップさせるという販売戦略だったということだ。住宅販売業界であまり新味のある話題がないときに、あたかも革命的な技術革新かのように「エコ」の大義名分に乗せて「外断熱」騒ぎを演出した。そういうことだ。
 技術的な結論を言ってしまえば、外断熱といわれる外張り断熱でも、内断熱と言われる充填断熱でも、ほとんど変わりはない。良い材料を使って良い施工をすれば、良い性能は発揮する。ただし、欠点になりやすい部分はそれぞれで違うから、材料選定や施工上の注意は別個に考えなくてはならないが。
 大事なことは、そうした技術的な問題ではなくって、「エコ」とか「外断熱」とかの見せかけの正義に騙されないこと。「エコ」で快適で常春の室内を実現すると、結局電気をたくさん使うことにならないか。そもそも、あまりにも快適な室内環境になってしまうと、人間はどうなってしまうのか。子どもたちはどんな体質になってしまうのか。
 その答えは、現在の子どもたちの中に既に存在している。体温が35℃で汗をかけない子どもたち。体温計メーカーのテルモのホームページには、こんなことが書いてある。
 
 近ごろ、保育園や幼稚園への登園後、遊ばずにじっとしている子や、集中力に欠け、落ち着きがない子、すぐにカーッとなる子が目につくようになりました。おかしいと思い、保育園に登園してきた5歳児の体温を測ってみますと、36℃未満の低体温の子、そして37.5℃近い高体温の子どもが増えていたのです。
 調査によると、約3割の子どもが、低体温、高体温であることがわかりました。また人の体温は朝低く、午後から夕方にかけて高くなるという変動をくり返し、その変動幅は1℃以内が普通とされていますが、朝の2時間だけで1℃以上変動する子が12%近くいました。それとは逆に変動のない子も7.2%いました。
 
 その原因とされているのが、・運動不足 ・遅寝 ・睡眠不足 ・朝食の欠食または不充分(排便のなさ) ・エアコンを使いすぎる環境 ・テレビ 、ビデオ視聴やゲーム時間の増加。
 人間の汗腺は3歳までに発達するそうで、それまでの幼児期にどんな環境で育ったかが大きく影響しているという。同じ日本人でも、寒い地方と熱帯生まれとでは汗腺の数が3割以上違う。だから、幼児の時期に常春の快適な環境に浸っていると、汗をかけずに低体温や高体温ですぐに熱中症になる子どもに育ってしまう可能性が高い。子どもを守るというのは、何も子どもに楽をさせるということではない。耐えることを教えるのも大事だし、なにより耐えられる体を作ってやることは親の務めだ。
 
 と、こんなふうに書いたからといって、断熱は全然いらないとか、エアコンは打ち壊せということじゃあない、もちろん。ウチでも、一番暑い時期の風呂上がりはエアコンつけるし、寒い時期にはホットカーペット(電磁波カット)くらいはつける。断熱だって、エコに騙されさえしなければ良いに越したことはない。とくに屋根の断熱と西日対策は、何もしないと家の中に居られないくらい暑くなるから、しっかりやっておきたい。断熱にプラスして、暑い空気を流して捨てる二重屋根とか壁通気も有効だ。普通の二重屋根はコストアップするので、とっても簡単な方法もあったりする。
 それと、断熱材で忘れてはいけないのは、防火性。絶対に燃えないというのは無理でも、ない方がマシという防火性能では悲しい。ちなみに、この悲しい断熱材はグラスウールで、たくさん入っていればいるほど外壁の防火性能は悪くなる。
 
 そんなことも考えながら、子どもたちを守る家の断熱は考えたもらいたい。
 
 
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