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Hello 山岸飛鳥 さん     
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プロフィール
HN:
山岸飛鳥
HP:
性別:
男性
職業:
木の家プロデュース
趣味:
きこり
自己紹介:
木の家プロデュース明月社主宰
木の力で子どもたちを守りたい
田作の歯ぎしりかもしれないけど
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  さて、木の家とか木の床とか木の壁とか木の天井とか、まあ何でもいいんだけど、木のナントカというときにどんな木かということは大問題だ。木は木でしょ、と言われるとミもフタもないけれど木は木でもいろいろある。手元の辞書で木の付く字を探すと434文字もある。その中で建築に使われる木は、実はちょっとしかない。というか、三、会、公の3種類で家は建つ。
 木偏に三で杉(すぎ)、木偏に会で桧(ひのき)、そして木偏に公で松(まつ)。他にも、栂とか樅とか栗とか楢とか桜とか言い出せばいろいろあるけれども、とりあえず、杉桧松の三種類があれば家はできる。
 で、どれが一番子どもに優しいかというと、文句なしに杉だ。花粉症で不人気の杉は、柔らかくて肌触りが良く温かくベタつかない。転んでも滅多にケガしないし、裸足であれば適度に滑りにくい。ただし、柔らかいので傷やへこみはあたりまえ。そんなものを気にしていたら杉とはつきあえない。
 桧は、温泉の桧風呂で触ったことがあるかもしれない。杉よりはちょっと堅くて油分がある。桧の独特のニオイはさわやかだ。あまり濃いと頭が痛くなるけれども。水に強いので土に近い土台に使うほか、高級材としていわゆる「和風建築」では目に付くところに使われる。好き好みはあるけれども、桧は晴れがましくて私はちょっと抵抗感がある。杉よりは堅いとは言え、子どもが遊び回れば傷が付くのは同じ。
 松は強度があるので、建物の床や屋根を支える梁に使う。最近は国産の松がほとんどないので、北米産の米松やシベリア産の欧州松がほとんど。この舶来種は松ではなく樅(もみ)の仲間だという説もあるが、性質は松に似ている。国産材にこだわって作るときは、米松を使わずに、杉の梁にする場合も多い。(そうなると2種類で家が建つ) それはともかく、松は床に使うことも少なくないが、油分(ヤニ)が多いので手足の触れるところだとベトベトすることがある。アルコールできれいにはなる。
 そうそう、信州や北海道では、杉よりも唐松(からまつ)が多く植えられている。信州の高原に遊びに行くと、白樺と唐松ばかり見かける。唐松は松のくせに落葉樹で、紅葉したあげく冬のあいだは葉っぱを落とすので、ものすごく寒いとところでも生きていくことができる。冬でも葉がある普通の松は、葉っぱの中が凍ってしまって生きていけないのだと聞いたことがある。この唐松も松の仲間として建築用材に入れておかなくては、雪国の人たちに怒られる。
 
 木のあれこれを話し始めると止まらないので、とりあえずここまでにしておいて、「にせもの」について言っておきたい。言っておきたいというより、言葉の鉄槌を下しておきたい。
 「にせもの」にも何段階かある。一番ひどいのが、プリントだ。紙やビニールのシートに木目をプリントして、何かに貼り付けたもの。ひと昔の家の洋室の壁に貼ってあった木目の板はプリント合板。ベニヤ板に木目をプリントした紙を貼ってあった。紙だから、セロテープを貼ると木目がはがれた。それが発展して塩ビ化粧合板になった。紙じゃなくて塩ビシートだから結構丈夫なのだけれども、樹脂っぽいツヤツヤ感がなんともいえなかった。その後塩ビが良くないということになってオレフィンという樹脂に変わり印刷技術も格段に進歩した。そして今や、ちょっと見た目には私が見てもホンモノかニセモノか分からないくらいの「にせもの」が世の中を席巻している。オソロシイ。
 これが、今の家で見られるほとんどの「木」の正体だ。ベニヤ板か紙を堅く固めたものにオレフィンのプリントシール。床以外は全部といっても良いかもしれない。床はさすがに樹脂ではなく、ホンモノの木をうす~くスライスしたものをベニヤ板やスポンジの上に貼ってある。世にフローリングといわれる代物だ。その上ご丁寧に、ウレタン塗装という頑強で湿気を通しにくいペンキを上からコッテリ塗っているので、手に触れるのは木ではなくウレタンである。
 
 誤解のないようにベニヤ板について一言はさんでおこう。ちょっと実物をご存じの方は「ベニヤ板も木じゃないか」と思われるだろう。ベニヤ板の正体は、桂ムキにした木のうす~いうす~いシートを接着剤で何層にも貼り合わせたものだ。ミルフィーユのパイが木のシートで生クリームが接着剤と思ってもらえばいい。うす~い木と木の間に接着剤の層があるので、木としての性質はほとんど期待できない。しかも、この接着剤こそが悪名高きシックハウスの主犯格ときている。
 そして、この主犯格のベニヤ板を法律で公認してしまったからさあ大変。子どもたちの未来やいかに!! って大げさだと思いますか? いやいや、このくらいではまだ足りない。法律で公認したという国家犯罪は消えるものじゃない。もうちょっと詳しくいうと、2003年に建築基準法が変わった。ここで、シックハウスの原因うち二つだけが規制された。シロアリ薬だったクロルピリホスは全面禁止。ベニヤなどの接着剤に使われていたホルムアルデヒド(ホルマリン)は等級をつけて規制、ということになった。問題は、ここからだ。
 この中で規制を受けない等級としてF☆☆☆☆(フォースター)というものができた。気温28℃、湿度50%のときに揮発するホルマリンが、"一応"人体に影響ないといわれるものだ。それも換気扇を回しっぱなしの環境で だ。このF☆☆☆☆はいくら使ってもOK。なんの制限もない。けど、気温が28℃を超えたらどうなるのか。湿度が50%を超えたらどうなるのか。たとえば、室温が33℃で湿度75%になると、軽く2倍はホルマリンが出てくる。湿度や温度が上がるとほぼ比例してホルマリンの揮発は多くなる。国土交通省の役人も、建材を売っているメーカーもよくご存じ。知らないのは、勉強不足の工務店と住まい手ばかりなり。
 さらに始末が悪いのは、このF☆☆☆☆を国が規制しないと公認したものだから、どいつもこいつも「ノンホルム」とか「シックハウス対策」とか「健康」とか言って売り出したこと。で、何が起きたかというと、それまで細々と本当にノンホルマリンのベニヤ板を作っていたメーカーが製造をやめてしまった。カナダからも輸入されていたのがストップしてしまった。そらそうだ。値段が高くて手間のかかるものを作らなくても、普通のF☆☆☆☆を作っていれば「健康建材」とか言っていられるのだから。おかげで、ちょっとだけベニヤを使うときの材料に難儀することになってしまった。
 繰り返すけれども、F☆☆☆☆はノンホルマリンでも健康建材でもない。ホルマリンの揮発が比較的少ない建材であって、温度湿度があがれば基準を超える可能性も大きい。それも、換気扇を回しっぱなしが前提だ。こういうものを、国はお墨付きをあたえていくらでも使いなさいということにしてしまった。孫子の代に禍根を残す大罪なのだが、シックハウスの規制をしたという面ばかりが評価されて文句を言う人間は少ないのだから、まったくイヤになる。
 
 さて、木の「にせもの」の話を続けよう。プリント系のもの、ベニヤ板系のものと来て次はアマルガム系のものだ。アマルガムといってももちろん金属ではない。合金のように、木と合成樹脂を混ぜ合わせたものだ。詳しい作り方は分からないけれど、プラスティックのどろどろの中に木の粉を混ぜて固めたものというイメージ。何とはなしに木目のようなものがあったりして、不気味な代物だ。反対に、木の繊維の中に合成樹脂をしみこませるというものもあったような気がする。いずれにしても、見た目が木みたいであるということ以外は木じゃないのはこれまでのニセモノと同じだ。
 一体全体、なんでこんなニセモノを作るのかというと、ニセモノは腐りにくいとか伸び縮みしないとかいう特徴があるからだ。要するに、木の特徴は嫌いだけれど木の見た目だけは欲しいという極めてワガママで自分勝手な欲望によってこの世に生み出された。
 この都合の悪いところはオミットして都合の良いところだけつまみ食いしたいという欲望は、偽札を含めてあらゆるニセモノの誕生に共通している。そして、この見にくい欲望が子どもたちの心を日々浸食している。ニセモノに包まれた現代の家に住むということは、この欲望のサブリミナルにずっとさらされて生きるということなんだ。おお、考えただけでもオソロシイ。
 アタリマエだけれども、木はもともと生き物だ。生き物である以上は凸凹がある。つまり、色や模様や堅さにバラツキがある。木には枝があり、枝は節になる。生き物だから水を含んでいる。水を含んでるから伸び縮みする。実用に支障がない範囲では、こんなものは個性として楽しく眺めていればいい。
 ところが、かの恐ろしき欲望はそれを許さない。どれも同じ顔、いつも同じ顔を見なくては気が済まない。同じ顔、同じ顔、どこまで行っても同じ顔、そんな木の硬直した表情を並べたフローリングやドアを眺めながら暮らす家が、子どもたちの心に何の影響も与えないと誰が言えるだろうか。
 
 湿気を調整してくれるとか、匂いや見た目にリラックス効果があるとか、触っただけでも脳波が刺激されるとか、物理的生物的な木と人間の良い関係はいっぱいある。それはそれで大事なポイントなんだけど、でも一番大事なのは「あるがままの命を受け入れる」ということ。木という生き物だった素材と触れあうことで、バラツキのあるあるがままの姿を受け入れる感性が育つ。
 私がこの原稿を書いている目の前には、杉の板が貼ってある。一枚として、一箇所として同じ模様はない。色も微妙に違う。年ごとに日に焼けて変化もしている。節穴を覗くのは娘の楽しみだ。時々はささくれ立ってソゲが刺さったりするので、そんなときは磨いてやる。床の傷やへこみはもう数知れず。ひどいところは、スチームアイロンをあてるとむくむくと復元したりする。落書きしても、サンドペーパーで擦ればOKだ。そんなテキトウで大らかでマッタリとした空間がある。
 こういう空間では、子どもたちはほとんど例外なく走り回る。これまで数多くの木の家を作って、その家の子どもや見学に来た子どもたちの様子を見てきた。これは断言するけれども、杉の床、それも色をつけていないもの。そこに子どもが上がったとたん、走り回る。しばらく走ってから転げ回る。子どもが体調不良とかすでに調教されてしまっていない限り、ほとんど例外なくそうなる。これが「ほんもの」の力。頭が良くなるかどうかは知らないけれども、元気で優しい子どもが育つ。
 なんとしても、子どもの環境に木の空間を実現したい。
 
 
 
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無題
本当にその通りだと思います!
今、家を購入することを考えてマンションを見学に行ったりしてますが、
数少ない無垢材の床を使用したマンションは、とても高いかとても辺鄙な所にあります。
まともなものをまともな価格で買える世の中に、、、
その一端を小沢さんに期待していただけに辞任は本当に残念です。
前原、岡田、鳩山になるくらいだったら私が立候補します(笑)
汐音 2009/05/12(Tue)14:04:13 編集
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